ー廣川さんにとって種地区の魅力とは?
廣川弘貴さん(以下廣川)「昔」がちゃんと残ってるっていうのが本当に魅力的ですね。残っているうちにたくさん吸収して体得していきたいと思って移住しました。
ー故郷でもない土地の「昔」を守りたい、受け継いでいきたいという思いはどこから来ていますか?
廣川 昔海外を旅していた時に、色んな国の観光地じゃない田舎の地域を巡ったんですけど、その土地の日常・暮らしの文化に触れるのが本当に面白くて、でも自分に置き換えた時、自分は日本や富山を何も知らないことに気付いたんです。それで、帰国後自分の理想の場所を探したんです
ーそれで見つけたのが種だったということですね。
廣川 そうです。たまたま通りかかった時に、「うわ、あるある! 残っとる!」ってなったんですよ。
ーそこで数年後さらに宿も始められたわけですね。
廣川 はい。ここに暮らして自分が日々感じてるような魅力を、わかる人に楽しんで頂けたらと思っています。
ー心に残るゲストのはなし、お聞かせいただけますか?
廣川 カナダから来た20代の若いカップルなんですけど、1ヶ月かけて日本を旅していて、確か東京や日光などの関東の名所を巡って、そこからアルペンルートを目指して富山に来て、そのあとは白川郷や高山、最後は京都という日程だったと思います。日本の田舎を体験したくて農家民泊を探していたらしいんですけど、それに近い環境ということで友達の紹介でうちに来ることになったんです。
ー彼らはここで何をして過ごしてたんですか?
廣川 特に何もしません(笑)。3日間の滞在でしたが、散歩したり、自転車でダムの方まで行ったり。竹を削って箸を作る体験はこちらから誘ったりしましたけど、あとはとにかくのんびりしていました。実はそれが一番お客さんに体験してもらいたい過ごし方なんですけど。
ー何もしないとはもったいないような贅沢なような。
廣川 彼らは贅沢と感じてくれていたようで、日本の旅を終えて帰国した後にメッセージをくれて、そこには「いろんなところに行ったけど日本で一番ここが好きだった」って書いてあったんです。
ーそれは嬉しいですね。東京や京都での時間よりも、種での時間が充実していたということですかね。
廣川 一番落ち着いた場所だったのかもしれませんね。観光地疲れもあったでしょうし。癒されたんだと思います。
ー種は「何もしない」ことが豊かに感じられて癒される場所ってことですね。
廣川 日常から離れられるんですかね。ストレスを持った人が来てスッキリして帰れる不思議な場所です。こないだも1人で泊まっていかれた方が「ここに来たら本当に静かで癒されるわ」って言ってくれてたんですけど。その方、同じ上市町の方なんですけどね(笑)。
ー地元でも何かが違うんですね(笑)。
上市駅からバスに揺られて宿へ → 荷物もケータイも置いて手ぶらで散歩 → 夕焼けに染まる剱岳を眺める → 日が暮れたら満点の星空を見上げる → 宿に戻って白いご飯とお味噌汁を食べぐっすり眠る → 朝は白いご飯に梅干し・お味噌汁で目を覚ます → サイクリングで周辺散策 → 昼寝 → バスの時間を待って山を下りる ※バスは要予約