寒修行の滝の水、
流すのももったいない




最近これまでと違ってきたことなど感じることはありますか?

松井さん(以下松井)これまで「大岩といったら夏」っていうイメージが根付いてたけど、最近は山菜のシーズンとか秋にでもよく来られるようになりましたね。ハイキングの方とか自転車の方とか、外国人の方も来られます。

確かにいろんな方が来てますよね。

松井 あと最近のことと言えば、うちのおにぎりをとっても気に入ってくれたお客さんが「どうやって炊いてるんですか?」って最後厨房まで見ていかれたってことがありました。そのお客さんがSNSにアップしてくれたらしくて今年は本当におにぎりがよく出ました。特別な炊き方をしてるつもりはないんだけど、大岩のお米とガス釜とあとはやっぱり水かな?

ご飯は水で違いが出るっていいますが、確かここの水は藤水と同じ水源なんですよね?

松井 そうですよ。水の力は大きいかもしれんね。ここの水で作るからそうめんも美味しいし。お水に感謝、お不動さんに感謝です。

「心に残るゲストのはなし」ですが、そういう新しいお客さんのことが心に残っていますか?

松井 うちは昔からお寺の参拝とか行事に来られた方によく使って頂いているっていうのもあって、お寺との結びつきを大事に考えてます。だから私が心に残ってるお客さんていうと、例えば毎年大寒の入りの寒修行に来られる三重県の団体さんかね。滝に打たれた後にあんまり寒そうだから「お風呂はいってこなくていいの?」ってわたしが聞くと「そんな勿体無い!」って。

寒修行のありがたい滝の水だから流すなんてもったいないっていうことですか?

松井  そう。そのくらい信仰心が厚いのよ。 昔はそういう団体さんが全国各地からたくさん泊まりに来られてたし、ひとりで泊まり込みで修行されるような方もおられましたよ。

泊まり込みの滝修行ですか!

松井 昔は多かったですよ。1週間ぐらい泊り込んで毎日滝修行をされる方。

そう考えると門前街は元々はお寺の参拝者のための宿場だったんですね。

松井 昔はそうですね。今は交通の便も良くなって日帰りの方も多いし、そうめんだけ食べて帰られる方もおられるけど、やっぱり私としては、大岩に来たらお不動さんをお参りしていって欲しいですね。私自身辛い時や悩み事のあるときはいつもお不動さんのところに行くんです。ジッと見つめてると、その時その時で怒っているように見えたり優しい顔に見えたり、励まされたり、奮いたたせられたり。嫁にきて45年、たくさん救われてきました。お不動さんあってこそです。

なんだか旅館のこと以上にお寺との結び付き、参拝客との結び付きを大切にされていることが伝わってきました。

松井 お店のことも大切だけどまず大岩全体の発展が第一だと思っています。後の世代の為にも。お寺と一体となって新しいことなんかもしながら、大岩全体が盛り上がっていけばと思っています。私はね、大岩って嫁いできた土地だけど、本当に大好きなのよ!

きっとそれが一番の原動力ですね!